最後はもう誰も話す元気もなくなりながらも漸く大坂へ入った俺達を待っていたもの。
それは家茂公のお乗りになった船が悪天候で遅れている、との報せだった。
故に取り敢えず大坂の屯所である萬福寺へと向かうことに。
まだ大樹公の到着までに日が掛かるということもあり、近藤局長の計らいで正月三が日が済むまで、つまり今日明日と俺達を非番としてくださったのだが。
「暇(イトマ)を」
「夏はんな余裕もなかったからな。お前、アレ以来家に顔出してねぇんだろ。折角だ、今夜は戻らなくていいから行ってこい」
更に土方副長からそんな下達があった。
なんとお優しいお方なのだろうか。
「御厚配賜り有難う存じます」
そのお心配りを断るという選択肢は俺には勿論ない。
……とは言え、実のところあまり気は向かない。
寺の庭の砂利を鳴らして歩く。
時刻はまだ八つ刻の鐘が打たれたばかり。
「はぁ」
今から行ってもなぁ……。
「溜め息なんてついてどうかされたんですか?」
不意に、声が降ってくる。
……降って?
はっと顔を上げると木の上に腰掛ける沖田くんの姿があった。
「お、沖田助勤、何故そんな所に」
「あ、鳥が木に残った柿をつついていたので見ていたんです。可愛くてつい」
えへへ、て。
きっとあんさんの方がよっぽどかいらしわ。や、変な意味やのうてやで。
そんでわざわざ気配消しとったんかいな。一瞬びびったわ。
「珍しくぼんやりさんでしたね」
ストッと軽やかに降り立つと、沖田くんはにこやかに俺を見下ろす。
……ちょっと天、こん人に二物も三物も与え過ぎちゃうか。
剣の才に性格良し顔良し背ぇもある。あ、四物や。
まぁちぃと難もあるけども。
「少々考え事をしてまして」
「まぁそんな時もあります。それよりもし良かったら今から例のおこし、連れてって下さいませんか? なんだか手持無沙汰で」
なんて苦笑いする青年につい俺の表情も緩んだ。
中々ええ返しやん。そんくらいの距離感が一番や。
「……ええ、丁度私も時間をもて余していたんです。是非とも」


