明けましておめでたい空気をゆっくり味わうこともないまま近藤局長以下、隊の約半数で京を発った。
大坂へはまず鳥羽街道を下って淀に入り、そこからは淀川を舟で下っていく。
帰りは大坂街道を歩かなければならないが、行きは楽なもんだ。
ただ……
「っくしっ!!」
さぶい。もっそいさぶい。
冷たい北風がビュービュー吹き荒ぶ川の上をゆらゆらゆらゆら延々ゆらゆら。
そら鼻もぶーぶーっちゅう話や。
流石の屈強な男達も舟の真ん中では身を寄せあっている。
「ぶしっ」
「くしゅんっ」
「へっくちん」
川面に響くは、くしゃみたち。
大坂着く前に風邪ひきさんであふれんちゃうか……。
「へっぶしゅっ!」
「ぎゃあきったねぇ! 寄んな新八ぃっ!」
「あー? しゃーねぇだろ、出るもんは出っぶしゅっ!」
「ぎゃー! でっぶしゅってなんだよテメー!」
……わやや。
じゃれ合うのは藤堂くんと同じく助勤の永倉新八くん。中々逞しい豪気な青年だ。
せやけど頼むからせっまい舟ん上で暴れんといてくれ。
「平助新八うっせぇ暴れんな! 投げ捨てられてぇか!」
流石です、副長。
舟が転覆する前にいっそ捨ててって下さい。阿呆は風邪ひきませんし、彼らならきっと泳いでついてこれますわ……。
「ねぇねぇ山崎さんっ」
そんなことを考えていれば、船尾にいた俺の元へ沖田くんが近付いてきた。
「何か?」
「大坂で名高い菓子って言えば何でしょう?」
楽しむ気ぃ満々やなおい。ええんかうちこないな幹部ばっかしで。
「……あみだ池大黒のおこしは有名ですね。萬福寺(新選組大坂屯所)からも少し歩けば行けます」
「へぇーっ! もし暇が頂けたら連れてって下さいませんか?」
「はぁ、まぁ構いませんけど」
「有り難う御座いますっ」
珍しい。いつも昔馴染みの人らとしか行動せんのに。
まぁ、悪い気はせんけどな。


