あいつ俺に一言も行ったなんて言うとらんかったのに。
りんちゃん……今度呼んだろ。
絶対顔真っ赤にして怒りよるであいつ、ぷぷ。
まさにりんごやりんごちゃん。流石土方副長、ええあだ名つけてくれはるわぁ……。
「どうかしました?」
「や! 何でもあらへんっ。まぁ仲良うやっとるみたいで何よりや」
一人にやける俺を不思議そうに見つめ小首を傾げる夕美に、にぱっと笑いかけて残りの茶を一気に飲み干す。
「ほなそろそろ戻るけど」
「えーもう? 来たばっかりじゃないですかー」
「ちょい顔見に来ただけやからな。あと、二日からちと大坂の方に行かなあかんねん。せやからまた暫く来れんて言うとこ思て」
「えー」
……まったんな頬膨らして。
そんな夕美に浮かした腰を止めると指でその頬を挟み、ぷしゅーと空気を抜いてやる。
「土産におこしでも買うてきたるさかい」
ぽんぽんと頭を叩いて立ち上がり薬箱を背負った。
まぁ遊びで行く訳ちゃうけど、そんくらいの時間はとれるやろ。
膨れた子には菓子やんな。
やっぱ大坂土産や言うたらおこしやし。俺も最近食うてへんさかい、ちとようさん買うてこよかな。
そんなことを考えながら顎の下で笠の紐を結ぶ。
「ほなまた来るよって、お利口さんにしとくんやで」
「……はーい」
何でまた口が尖ってるねん?
「どしてん?」
「何でもないですっ! ほらお仕事お仕事っ」
「お、おう?」
そないグイグイ背中押さんでええやん。
名残惜しそうやったり早よ帰らそしてみたり、女子ちゅうんはようわからんのぉ。
「……おこし、絶対持ってきてくださいね」
それでもぽそりと背中に呟きが吐き出され俺は思わず笑った。
「ん、約束や」
うん、やっぱ菓子やな。


