あー腹減ったぁ……。
着替えを済ました俺は広間へと向かって冷えた廊下を歩く。
原田くんの相手は無駄に体力使うねんなぁ。それでのうても昨夜は茶漬けしか食うてへんのに……。
今にも鳴りそうな腹の音を必死で堪えていれば近付いてくる見知った気配。
もう復活したか。
「お兄っ」
ぱっと見無傷やから感心するわ。
「此処では山崎さん、やろ」
「だって俺も山崎さんやもん。それよかお兄知ってたやろ夜のあれっ! めっちゃ怖かってんけどっ」
あー昨日は。
「度胸試しか」
ここ新選組では新入隊士は一定期間仮同志として扱われ、最後に度胸試しが行われる。
ここで怯えた者は追放。
臆病者は要らぬというのが土方副長の方針だからだ。
「寝てたら突然スパーン障子が開いてやで! 目ぇ覚ました瞬間にったぁ笑た藤堂助勤がいきなし杵を振り下ろしてきてんけどっ!」
……そら恐ろしな。
そういやこの前八木さんとこで餅つきしたな。それか。
「俺もぉあん人嫌やぁ……」
涙目て。よっぽど怖かったんやな。
……でもやで? そしたらさっきの黒い藤堂くんは何や?
「まだ此処におるってことは逃げへんかったんやろ? どないしてん?」
「……寝っ転がったまんまやったから反射的に蹴っ飛ばそうとしたんやけど……それがその……運悪く金的に…」
「金っ!?」
ちょっ、そこはあかんやろっ! なんぼ小そうてもかいらしても彼も男やからな!
一瞬俺までぞわぞわしたわ!
そら黒くもなるっちゅうねん。どっちもどっちや。
「諦め。まぁ自分なら大丈夫や、持ち前の打たれ強さで頑張り」
「それ俺やられまくるん前提やんっ」
「試練も無事終わって良かったな。よう来た、我らが新選組へ。さぁ飯や飯」
「無視すんなやぁっ」
あれで藤堂くんも助勤やしな、形はどうあれ目ぇかけてもろたならこれも鍛えられるやろ。


