林五郎を監察方の部屋へと案内して、首に手刀を一つ。
動かなくなったそれを俺の布団に押し込み、直ぐ様踵を返す。
向かう先は勿論今しがたまでいた部屋だ。
「戻りました」
立てた片膝に腕を乗せしゃがみ込むと頭を下げ、心服の意を表す。
「似てるのは顔だけなんだな」
文机に向かっていた土方副長はにやりと此方を振り返った。
「これは父の教え。あれは母方の従兄弟ですので少々棒術に明るい程度です」
「だろうな。腕試しん時、平助が楽しそうにボコってた」
ボコ……ぱっと見ぃ何もなかったように思うんやけど。
平助こと藤堂平助くんはうちの副長助勤の中でも最年少の青年だ。
前から黒いとは思とったけど見えんとこ狙うてまたかいらし顔してやることえげつないな。
平隊士虐めとらんやろか……これは要確認やな。
人は見かけによらんちゅー言葉はまさに彼の為にあるもんちゃうか……。
「で、あっちは?」
どす黒い笑顔の小柄な剣士を頭に思い浮かべていると降ってきた声に、はっと気を引き締める。
「特に怪しいところはないかと。島田のあからさまな視線にも全く気が付きませんでした」
……嘘はついてへん。あれは確かにずぶの素人や。
「ふん、まぁお前がそう言うなら俺はもう何も言わん。好きにしろ」
重圧感はそのままに、それでもどこか柔らかな声が投げられる。
それはそれだけの信用が置かれていると、不遜にも思えてしまう言葉。
主に信頼されると言うことは仕える者にとって最大の喜び。
表向きは新選組に属してるとは言え、俺の仕えるべきはこのお方なのだから。
「御意に」
寛大な御心の御方に、私はいつまでも付き従いましょう。
そう、決意を新たにする。
やはりこのお方を主君として良かった……。
「もう下がっていいぞ。……ああ、最後に一つ」
「はい」
「帰るついでにこれを島原の花君太夫に頼む」
手渡された細長い紙包は中でしゃらりと繊細な音を奏でる。
「承知、致しました」
……良かったよな?うん。


