日が落ち間もない京の町を林五郎と二人、ただ黙々と雪を踏みしめ歩く。
一本の傘に、男が二人。
とはいえ、女にも負けず劣らず細身な俺らには然程問題はない。
それでも昼間より肩に雪がかかるのは二人の間に少しばかり距離があるからだ。
西へ西へ。幾つかの辻を過ぎたところで、林五郎がぽそり呟く。
「ごめん」
ただ一言。
されど一言。
そんな不器用で素直な義弟(オトウト)に、僅かに頬が緩んだ。
「……謝らんでええ、別に話したらあかんことちゃうやん。それに、俺も似たよなこと思とった」
あれが生きとる時は、こいつもたまにふらっとやって来て飯を食うてったなぁと。
俺が新選組に入ってからはほぼ顔を合わせることもなくなった林五郎。
偶然とはいえ三人で、懐かしい味の飯を食えば、そう思うのも無理はない。
疼くのはきっと林五郎も同じ。
謝る必要なんて、ない。
「……なぁ」
「ん?」
「お兄は……夕美……や、やっぱなんでもない」
足元に落とされた林五郎の呟きに、俺は敢えて聞き返さなかった。
「……三条の藤田屋。明日から夕美が働く奉公先や」
代わりに情報を一つ。
「旅籠やけどな。あれはまだ京に知り合いがおらん、仲良うしてやり」
「ん」
ぶっきらぼうな返事の裏に潜む淡い感情に、思わず片口を上げる。
「惚れたか?」
「なっ!? あ、阿呆かお兄っ! べ、別にそんなんちゃうしなっ」
「ほーぉ、さよかぁ」
むきになって言い返してくる林五郎に、俺はやっと自然な笑みが零れた。


