「ふふふー良い匂いー」
「前見て歩きや」
にやにやと緩んだ顔で夕美が小さなちりめんの巾着を大事そうに抱く。
結局買ったのは最初の店。
選んだのは匂袋だった。
「だって嬉しくてっ」
そこまで喜んでくれるとまぁ俺としても嬉しいけども。
隠すことなく向けられる花のような笑みがどこか擽ったい。
「……さよか」
俺はぽりぽりと頬を掻いて視線を逸らした。
「有り難うございますっ。大切にします!」
「どーいたしまして。ほな早ようち帰ろかーもう林五郎も起きとるやろ」
「あ! 忘れてた!」
……悲しいな、林五郎。
「さー帰ったら飯や。林五郎にも旨いもん食わしたり」
「う。頑張ります」
「……狡いわ、俺だけおいてけぼりにして」
口を尖らせた林五郎が、茶碗片手に俺を睨む。
「まだ言うか。自分が勝手に酔い潰れただけやろ」
まぁ仕向けたのは俺やけど。
「俺んな飲んだかなぁー?」
飲んだんや、実は三合も飲んだんや。
心で密かに呟いて、俺は素知らぬ顔でズズッと茶をかけた冷飯を啜った。
「り、林五郎さんっ、味はどうですか?」
おいてけぼりにしたことに後ろめたさがあるのか、夕美が話題を変えるように話しかける。
「おー見た目は兎も角味は旨いでっ。何かうちの味に似てる、なぁお兄」
「ちょっと、なんか一言余計です」
……まぁ基本は俺が教えたんやし。
ちらと夕美を見れば膨れながらも俺の出方を窺っているらしく、こちらへと視線を送っている。
妙なことを口走らぬようにしているのだろう。
……ええ子や。
「せやな」
俺は無難に頷いて金平に箸を伸ばした。
「なんかこないしとるとお姉がいた頃思い出すわ……」


