俺の温かな思いが届いたのかどうなのか。
よくわからぬながらも調子を取り戻した夕美と辿り着いた三条大橋。
その中腹に立ち、俺達はゆったりと流るる川を眺む。
「……特に変わったとこはないですねぇ」
河川敷に生える枯れた草は雪に覆われ、踏み入るのが躊躇われた為此方にいるのだが。
「帰れるとしたら此処だと思ったのになー」
通りすがる人の訝しげな視線を受けつつ、橋の色々な場所から枝などを投げ落としてみたけれど、どれも何事もなくただ水面へと吸い込まれていくだけ。
何の変哲もない普段の穏やかな鴨川がそこにあった。
「……落ちてみよっかな」
「自力で岸まであがりや。こん糞寒い中またずぶ濡れとか俺は勘弁やからな」
雪やで雪っ! 悪いけどほんま無理やし。
それに可能性として限りなく低いもんに俺はよう手ぇ出せん。
割かし堅実なんや。
「あー烝さん冷たーい」
……そんな顔されると俺がめっさ酷い奴みたいやん。
てか……冗談ちゃうん?
「ほんまにやんの?」
ここは男として頑張るべきなんか……?
「冗談です、流石に確証もないのにそこまではちょっと」
やんな。……焦るやん。
ぶーっと口を尖らす夕美にそっと胸を撫で下ろす。
「また、考えてみます」
残念そうに笑みを浮かべるその顔を見ると俺まで気落ちしてしまいそうになる、が。
「来れたんやからきっと帰れるて。せやからまぁあんませかんと、な?」
おんなじよにしょんぼりしてもしゃーないし。
「ほな今日のところは四条河原戻って甘いもんでも食うて元気出そや! ご褒美やからな、そんあとはまたお前さんの好きな小間物屋でも覗きにいこか」
「え!?」
分かりやすく輝いた顔に、ほんの少しの後悔をしつつ。
「そーですよね! 元気だしていきましょ! さっ、烝さん早く早くっ」
「お、おう! その意気や!」
夕美に引き摺られるようにして俺達はもと来た道を進んでいった。


