風が、凪いだ。
冷たく小さな結晶だけが、ただ音もなくそっと俺達に降り注ぐ。
「……別に、仇をとろうなんて思てない。お姉はんなこと望まんやろし。でも、俺もお兄みたいに誰かを守りたいって思ったんや! だからっ」
この半年以上もの間、こいつはどんな思いで過ごしてきたのだろう。
実の姉をあんな風に失って。
突然心にぽっかりと穴が開いたのは……きっと、俺と同じ。
苦しんで、考えて、また苦しんで。
恐らく様々な負の感情が渦巻いたであろう長い月日。
これが今こうして此処に来たということは、そこにどれだけの決意があったのだろう。
己を囲む人々を、一番に己を思う親までもを説き伏せ。
今までの安穏な生活を捨ててまで誰かを守りたいと言えるこいつの想いは……本物。
その想いに、俺とどんな違いがあると言うのだろうか。
「俺はっ……」
「すまん」
否、ない。
「確かに、阿呆は俺やな」
浮かぶのは苦笑。
自らに言い聞かせるように呟いた言葉に、唇を噛んで俯いていた林五朗がはっと顔を上げ。
俺はニヤリ、口許に弧を描かせた。
「どうせお前が副長に此処を聞いたってことは既に入隊済みなんやろ。今更止めるなんて言うてみ、即行切腹や」
「……切っ!?」
「なんや、聞いてへんのか。まぁあんなけ大層な啖呵切ったんや、逃げるなんてせんわなぁ。こうなったらお前にもちゃきちゃき働いてもらおかぁ」
「もっ、勿論やっ! ……」
……なぁ。
俺らの弟は、たまにちょっぴり可愛げないとこもあるけども、中々真っ直ぐ育っとるわ。
割かし……嬉しいもんやな。
まぁでも、危なっかしいことには変わらん。
お前も、こいつが怪我せんようそっから見とったってくれや。


