表は未だ雪が降り続き、道の端はうっすらと白く染まり始めている。
「おい、起きぃ」
井戸に凭れさせた林五朗の襟口から汲み上げたばかりの井戸水をつつつと垂らせば。
「はぅあ!!!!」
効果は抜群や。
飛び起き海老反り悶えるそいつを、俺はしゃがんだまま掌に顎を乗せ見上げた。
「あいつには新選組やゆうんは黙っとくように。あと話は手短に頼むで、俺は忙しいんや」
簡潔に言いたいことを言って立ち上がると、漸く大人しくなった林五朗は涙目で俺を見る。
「お兄……相変わらず俺の扱いぞんざいやで……」
「こんなん序の口や。うちのおとん知っとるやろ」
「……」
何を思い出したのか、林五朗はぷるぷると震え、顔面蒼白だ。
怯えた仔猫のようなその姿は若干可愛く思えなくもないが(勿論弟のように、や)甘やかしは禁物。
直ぐ調子のるんもこいつの悪い癖やからな。
それより、気になるんがさっき言いかけた言葉や。
「話戻さしてもらうけどや、なんでまた突然新選組に入ろうなんて思てん。まさかお前……」
その目を見据え、低く静かに問う。
そうすれば林五朗も顔に色を戻し、真っ向から俺を見た。
「別に、変なことは考えてへんで。ただお兄を一人にしときたなかったんや。おとんらにもやっと許してもらえた。だから」
その目は只々真っ直ぐな光を宿す。
こいつは昔からこうやった。
実の兄貴らより何故か俺に懐いて。
的にされても泣かされても、いつもちょこちょこと後ろからくっついてきよった。
よう似た顔やからか、ほんまの弟のように思える存在。
……やからこそ。
「あかん、帰れ」


