手近にあった壬生菜。
それを飛苦無が如く投げつければ林五朗の口は見事小さな畑と化す。
口から葉っぱを生やした姿はかなり間抜けだが知ったこっちゃない。
ふぅ、危なぁ……。
折角人が新選組なん黙ってんのに勝手に名前出すなや、ったく。
「ぶほっ! 何すんねんお兄! せめて洗てからにせぇや!」
「新鮮やろが」
「しんせん違いや! 俺が言いたいんは新選ぐ」
「ほな朝掘り人参なんてどや」
何度も言うな阿呆が。
察しろや!
天井を仰いだ林五朗を白い目で眺め、囲炉裏の向こうに回り込むと漸く静かになったその口から人参を引っこ抜く。
僅かについた歯形は抵抗の跡か。
……ふん、無駄なことを。
まぁ多少反応出来たんは褒めてやらんでもないけどな。
「り、林五朗さん、大丈夫なんですか……?」
「あ、これ? 平気へーき、こいつの唯一の売りは打たれ強さやねん」
昔から俺の練習台やったし。
心配そうに俺達を見る夕美にへらり笑って人参を放り投げる。
「つうか身内の恥ずかしいところ見せてもてすまんなぁーすまんついでにちぃーっとばかし待っとってくれるか」
ぽりぽりと頭を掻いて笑みを残し、俺は気の利かない従兄弟を引きずって長屋の外へと向かった。


