「ほなすんまへん、よろしゅう頼んます」
「いやぁうちこそ丁度人足りひんくて、助かりますわ」
「はは、バンバンしごいたって下さい。ほな今日はこの辺で……また明日お邪魔させてもらいますさかいに」
にこやかに挨拶を交わし暖簾をくぐると、外は小さな白い雪が舞っている。
頬を撫でる寒さにぶるりと震え、俺は肩を竦めて歩き出した。
甘味処、料亭、居酒屋、小間物屋、他にも色々と迷った結果、結局とある旅籠へと紹介することに。
あまり表だって人と接する場所よりは良いと判断したからだ。
幸い人が辞めたばかりだったらしく、すんなりと雇ってくれることになり今に至る。
まぁ多少不安もあるけど……下働きくらいやったらなんとかなるやろ。
ふむと頷き、夕美の待つ長屋へと足を向けた。
ガタガタと木戸を開けて中へ入り
「ただい……」
そして固まる。
「あー烝さんお帰りなさーい」
にこやかに夕美が笑う。
その横で、
「あー烝さんお帰りなさーい」
にこやかに笑う一人の男。
何故か仲良さげに囲炉裏を囲み、湯飲み片手に干菓子を食っている。
勿論その顔はよく知るものだ。
……は!?
「ちょっ……なっ……何でおんねんお前っ!!!」
ビシィッ!! と指差す先で、その男はすっと真顔に戻り、しれっとした眼差しを寄越した。
「そんなん、用があるからに決まってるやろ」


