「可愛く言ってみたのに……」
「鏡見てから言うてくれ」
友人として言わせてもらお、タコ口の鬼瓦にしか見えん。
屯所の屋根に付けときたいくらいや。
……ま、こんな形(ナリ)でまた面倒見のいい真面目なええ奴やからまたおもろいんやけどな。
口端に小さく笑みを浮かべ、その大きな影を見上げる。
すると。
「だが」
つい今まで人差し指をつんつんとつついていじけていたそいつは、コロっとその表情を一転させた。
「それなら尚のこと、俺は彼女が凄いと思うがな。あんな顔の烝くんは、俺でも見たことがなかった」
目尻を下げ、島田は柔らかく微笑んで俺を見る。
厳つい顔に似合わぬつぶらな瞳にそんな風に見られるとやはり居心地が悪い。
その奥にあるものを、俺は知っているから……
「そぉか? これでも自分の前ではよう笑てると思てんやけどなぁ。あ、そか、俺が突っ込む方が多いさかいに冷たい印象なんやて」
敢えてにこやかに、饒舌に、明るく語る。
「……烝くん」
「まぁその仕事も明日までや。さ、もう話は仕舞いやろ。俺はそろそろ戻らせてもらうで、もっそい寒いわ」
複雑に眉を下げたその顔を見ないように、寒さに肩を竦めながら島田の横を通り過ぎた。
「ほなまたな」
そう一言だけ告げると、振り返ることもなく瓦を蹴る。
すうっと吸い込んだ空気が針のように冷たくて。
胸が少し……痛んだ。


