枯れ枝の隙間を吹き抜ける風が大気を揺らして寂しげな音を奏でる。


乾いた砂を巻き上げていくそれは今日も冷たい。


たった二日で遊撃隊の名を返上し、新選組を貫くことになった俺達は、徳川慶喜公の下坂に伴い大坂に入ったあと伏見鎮撫を命ぜられ、その奉行所に布陣することになった。


流石に京の周辺は何処も不穏な空気が漂い、時折逃げ出す人々の姿も目に入る。


もしかしたら戦が始まるかもしれない。


それは俺達じゃなくても考えるところなのだろう。



……戦、か。


隊務が一変し、手持ちぶさたな時間の増えた俺は、奉行所の庭木を眺めて諸々に考えを廻らせていた。


枝先に残った枯れ葉がゆらゆらと風に揺れる。


いつまでも落ちないその頑なな様子はまるで今の幕府──俺達のようだと妙な考えが頭を過った時。



「山崎」



珍しく静かな声が聞こえた。


「……永倉助勤。何か?」


縁側に腰かけたままゆるりと振り返ると、その人は片方の口角を吊り上げてにやりと笑う。


「もうお前も助勤だっての。つかもうなんだ、あれだろ、呼び捨てで構わねぇよ」


その笑みはどこか無理矢理で、悲壮感に満ちていて。


あれが──藤堂くんを逃すことが出来なかったことが、未だ尾を引いているのだと、わかる。


……仲、良かったもんな。