白んだ空から初雪が舞う中、漸く副長が京に戻られて三日。


未だ行方の知れぬ夕美に、林五郎とはあれ以来再び目も合わさぬ日々が続いている。


がらりと変わった周囲に、俺の毎日はただ隊務をこなすのみとなった。


それは、思ったよりも簡単なことだった。


此処にはもう、確かな俺の居場所があったから。


必要としてくれる人がいる。
頼ってくれる人がいる。
求めてくれる人がいる。


それだけが唯一の救い。


それに、集中さえしていれば、余計なことは考えずにすむ。


大きな刻の流れに身を任せて黙々とやるべきことをする。


それだけで、今日という日は必ず終わってくれるのだから。



冬独特の色の抜けたような空を見上げて、冷たい風にそっと吐息を混ぜる。


くすんだその色はどこか物憂げで、気持ちまで沈みそうになるけれど。



「あ! 山崎さ、わあ!?」


むさ苦しいこの屯所にそぐわない、声変わり前の少年の声が背に届いて、沈みかけた意識が呼び戻された。


共に聞こえた板を叩くような音は、間違いなくそれが転けた音と推測され。


……またか。


この数日何度も聞いたその音に乾いた笑いでひくりと口角をあげると、仕方なく踵を返して来たばかりの広縁を戻ることにした。