「一つだけ、聞いても良いですか?」


溢れそうになった溜め息を唇を噛んで押し留めたところで、沖田くんが僅かに声を落とした。


その真剣みを帯びた眼を吸い寄せられるように見つめ返して続く言葉を待つ。



「ただ振られただけじゃないですよね?」

「違います」


口許に手を添え、密やかに呟かれたそれに、するりと言葉が滑り落ちた。


「冗談ですよ」


自分の冗談て実は半分本気やろ。


そう反射的に突っ込んで、じとりと半目で睨んでみるものの、クスクスと笑う沖田くんに良い意味で気が抜ける。


もしかしたらこれは彼なりの元気付けだったのかもしれない。


優しい、ねんな、ほんまは。刀より竹刀の方がよっぽど似おとる。


迫り来る死。


闘いの中に突然訪れるものとは違って、緩慢に音もなく忍び寄るそれはゆるゆると精神をも蝕む。


時折、布団の中で刀を握り締めているのを俺は、俺だけは知っている。


最近ではもう隊務に立つこともない、ただ弱っていくだけ。


数ある隊の中でも強者揃いの一番隊の組頭を任された彼の今の心中は計り知れない。


なのに──



……俺も、もちっとしっかりせなあかんな。自分のことで手一杯でどないするんや。


そう、何とか己を鼓舞した。



「けほ」