しかしながら翌日、俺の期待は呆気なく打ち砕かれることとなる。
「……こんな書道の達人みたいな字読める訳ないじゃないですかっ!」
取り敢えず手始めとして寺子屋で使われる往来物(当時の教科書みたいなもの)を渡してみればこれだ。
「楷書まで書けんのに?」
「楷書? 昨日の手紙のことですか?」
「そや、普通あんなん中々書ける奴おらんで」
「えっ!? 普通あれでしょ!」
……そぉか、そうゆう認識なんか。
妙に理解が早くなってる気がするのは流石俺と言ったところだが。
「俺らが通常読み書きするんはこっちなんや。所謂御家流ってやっちゃ。楷書は滅多に見んからな、趣味でやったか余程学のある奴くらいしか書けへんわ」
短い溜め息をつきながら俺は筆をとった。
せやけど、読み書き出来るってことはそれなりに教育を受けとるっちゅうことや。
ならきっと何とかなる。
文机に置いた紙につらつらと文字を綴っていく。
「わー烝さん上手いー! これ何て書いてあるんですか?」
「いろは歌や」
「あっ! それ、いーろーはーにーほーへーとってやつですよね」
……その妙な節はなんやねん。
「まぁ知っとるなら話は早い、最低こんくらいは読み書き出来るようになってもらうで」
仮名さえ出来たら何とかなる。
「えっ!? ちりぬすっとまでしか知らないんですけどっ」
「ちりぬるをやちりぬるを! 誰が盗人やねんっ!!」
邪なちょい呆けかますなっ!
てか間違うとる上に覚えてるとこ短すぎやねん……!


