【完】山崎さんちのすすむくん



だがまぁしかしだ、俺とて本気で童達と張り合う程鬼畜ではない。


どこぞの異様な甘味好きとは違ってそこまで甘味に執着もない。


前回同様目的の寺に着く頃には一番幼い男の子を肩に乗せ、隣を歩く女の子の手を取って歩くことになっていた。


「すすむー」


と嬉しそうに首に絡む小さな手に湧くのは温かな感情。


肩に掛かる重み、幼子特有のその滑らかな肌が心地良い。


「夕美ちゃん早ようー」

「わわ、そんな急がなくてもっ」


少し前を歩くのは、こんがりと日に焼けた二人の男子、そしてそれに両手を引かれて境内に駆けていった夕美。


そんな三人の後ろ姿にさえ、手にいれることの叶わなかった平凡な幸せを垣間見ることが出来た。


それはきっと、もうこれからもずっと手に入らないもの。


後悔や苦しみとはまた違う、手の届かないものに恋い焦がれるようなこの感情がなんと言うものかは知らない。


ただ、きらきらと木漏れ日が降り注ぐ境内で、俺はその眩しさにそっと目を細めた。










存分に走って、跳ねて、笑って。


思いの外すっきりとした心で彼らと別れた帰り道。



「寄り道しよ」

「へ?」


俺は呆けた顔の夕美の手を半ば強引に引いた。