茹だるような暑さの中、通りを歩いていた俺は少しばかりぼーっとしていたようで。
突然眼前に現れた夕美の掌にはっとする。
このところの忙しさは簡単に伝えてあったからだろう、俺を見るそいつは本気で心配そうではあるが、今俺の頭を占めていたのはそんなことではない。
「ん、平気やで」
なんて微笑む俺に、
「なぁなぁすすむー今日のお八はあれがええねんけど」
と袖を引くのは見知った顔の童達。
二度も遊び相手になると流石に懐かれたようで、遠慮は何処かに消え去ったようだ。
まぁそれは良しとして。
「ほれ買うてきぃ」
引きつる頬で小銭を渡すと、嬉しそうに店へと駆けて行ったその背になんとも微妙な溜め息が溢れた。
なんであいつらまでおんねん……。
「ごめん……ね?」
申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた夕美が同じ様に、クンと袖を引く。
先日たまたま町で会った時に俺のことを聞かれ、もうすぐ会うよと言ったら本当に集まってしまったらしい。
久々に会う今日。
確かに出鼻を挫かれた感は否めない、が。
「ええよ、たまにはちびら見るんも癒されるしな」
彼らを見てほっと気の抜けた俺もいた。
まぁ最近大人に揉まれとったしな。
表情を緩ませてその頭に手を乗せると、夕美の顔もまた安堵に和らぐ。
「またいちゃついとんで」
「んなとこでよぉやるわ」
「早よ行くですすむー」
……や、やっぱちょい邪魔や。
団子片手に乾いた視線を寄越す童達にニヤリと口を上げ、俺は手を打つと同時に走り出すことにした。
「ほな競走や、べべたはお八なしっ!」
「あ! ずるっ! 大人の風上にもおけんやっちゃで!」
「阿呆、勝負は勝ってナンボや!」
こうなりゃオモクソ遊んだろうやないかいっ。


