丁度日が真上に差し掛かる今時分、強い日差しが白く乾いた通りに降り注いでいる。
天気の良い日はもうすっかり真夏の暑さだ。
頭がじりじりと焦げるような感覚に少し眉をひそめて町をゆく。
そんな暑さの中でも通りは飯時ということもあって、多くの人で賑わっていた。
向かいから数人の刀を差した連中が歩いて来るが、それもこの京では然程珍しくもない光景。
堂々たる様子で向かいくる男たちの横を通り過ぎると、そのまま近くの長屋の角を曲がる。
少し奥にある井戸の側で二人の女がけらけらと楽しそうに笑いあっているのを視界に捉えて。
俺はその手前にある裏長屋の戸を開いた。
「……ふぅ」
蒸された空気に息苦しさすら感じながらも、窓を開けて明かりと風を入れる。
そこから漸く袂に手を突っ込むと、小さく折り畳まれた紙を取り出した。
勿論、これはさっきの帯刀した連中の一番後ろを歩いていた表情の乏しい青年──斎藤くんからの密書である。
俺達は十日に一度、こうして町で接触を図る。
受けとるだけの時もあれば、副長からの文を渡す時もある。
大っぴらに接触することは禁止されている故に、変装までして斎藤くん本人にすら気付かれないようにして抜き取るのだが……。
「特に動きはなし、か」