初めは副長のように、ただ己の友を上へ上へと就かせたいだけなのだと思っていた。
しかしずっと見ているとわかる。
こいつの思いは副長とは違う。
こいつの参謀を見る目は友というより物を……絡繰(カラクリ)を愛でるような、そんなそこはかとない気味悪さが浮かぶ、目。
あくまで表には立たずにいるが、その実、全てはこいつの意のままに動いている気がしてならない。
人目を憚らずいくつもの噂が囁かれる今なら、袂を分かつ今なら、このくらいの踏み込みは許されるだろう。
「何を、か」
妖しく口角を上げたそいつがゆっくりと手を伸ばしてくる。
「勿論山崎殿と最後の夜を」
「去ねや」
のを疾風の如く叩き落とした。
言わせへんでっ!
毛が逆立つのをひしと感じながら目だけで威嚇すると、篠原は楽しそうに喉の奥を鳴らしてくつりと笑う。
「そんなゾクゾクする目が見られなくなるのは本当に残念だ」
あーそっちな上にそっちの人な!
新たに妙な性癖を覗かせるそいつにこれ以上は危険と判断を下し、無言で背を向ける。
と、
「鼠は船が沈む前に逃げる、それと同じだ」
聞こえた声に、ぴたり動きを止めた。


