冷たい木枯らしが枝に残った枯れ葉を浚い過ぎ去っていくと、漸く暖かな日差しが乾いた大地へと降り注ぐ。
梢では小鳥がさえずり、それに誘われるかのように固い蕾も次々に開いていった。
町に春の香りが漂い、桜が満開を迎えて間もなく。
彼らは京に帰ってきた。
「……御陵衛士?」
大きな土産を携えて。
「ああ、年末に天子様がお隠れになったろう?その墓守を賜ったんだとよ」
夜の帳が降りた屯所。
脇息に凭れ、副長がさらりと言葉を紡ぐ。
天子様の陵を守る──確かにそれだと元々尊皇自体には異存のない局長も分離を認めやすい。
ほんまにそれだけが目的やったら分離は方針の一本化にも繋がるし、俺らにとっても都合がええんやけど……。
「ではもう?」
「詳しいやり取りは明日じっくり膝を突き合わせることになっている。まぁ、近々正式に認めることになるだろうな」
そう言いって煙管に口をつけると副長は数拍の間を置いて細く長く、煙を吐いた。
宙を眺めぺろりと唇を舐めるその人は、獲物を狙う狼を彷彿とさせる。
気が引き締まる一瞬だ。
「……永倉斎藤藤堂、その三人を寄越せとよ」
「……それを、呑むのですか?」
「ばーか、呑むわけねぇだろ」
くっと笑って俺を見た副長の空気が僅かに緩み、それに密かに安心する。
鬼の面をつけるにはまだ少し、早すぎるから。
「そこは腹の中身が詰まったまま出て行けるだけで良しとしてもらう。まぁ斎藤をやれば納得すんだろ」
暫くはそれで様子見だと仰る副長であったが。
翌日、藤堂くん自らが御陵衛士を希望し。
参謀の推挙もあり、結局彼の分離もまた隊として認めざるを得なくなったのである。


