──『連れていってください』
何の因果か、時同じくして手渡されたそれに書かれていたのはまるで対となるかのような文言。
だが勿論大坂に、ではない。
何処へ、と言うのは全く別な場所であったものの、そこもまた思ってもみない所だった。
しかし今あえてそこへ行きたいと願う夕美に、俺は反対のはの字も浮かばず。
二つ返事で文を書いた俺は今、
夕美と並んで京の町を南へと下っていた。
……何話したらええんやろか。
会ってすぐこそ会話もあれど、二言三言話すとそれもぴたりと止まってしまった。
普段通りに見えないこともないが、どこか堅い空気を纏うそいつに尚更掛ける言葉に迷ってしまう。
けど、ここで触れへんのもあれやんなぁ……?
「あの、烝さん」
なんてモヤモヤしながら歩いていれば、半歩程後ろにいた夕美が突然袖を引いた。
「その……本当に私が行っても良いんですか?」
弱々しく尋ねてくるそいつは、俺が思ってる以上に『俺達』を気にしているのかもしれない。
今まであえて触れることはないとあまり話してこなかったことが、もしかするとそれを増長させたのか、とも思う。
自分の中では整理をつけたつもりでも、こいつはきっと、小さなわだかまりをずっと持っていて。
それを俺のあの一言が突いてしまった。
何度思い出しても間抜け過ぎて我ながらに呆れてしまうが。
「んなこと気にせんでええねん、もうあそこも売ってまお思てたしな」
今日はそれをなくす、良い機会なのかもしれない。


