飯を食べ終わって片付けを済ますと、俺は所用があるからと一人長屋を出て屯所へと向かった。
勿論夕美には先に寝とくようにと伝えて。
今日の報告(といっても殆ど内容のないものだったが)を終え、吹き荒ぶ北風の中、再び四条の裏路地の長屋へと帰り着く。
ガタガタと鳴る木戸を開き中へと入るとそこは出た時とほぼ変わらず、有明行灯(真っ暗にならないよう夜中に付けておく行灯)の明かりが僅かに灯っているだけ。
唯一変わっていることと言えば夕美が寝ているくらいだ。
……布団から落ちて。
んなモコモコしたんでよう転げていけるな。
呆れた眼差しでそれを眺め、畳へと上がろうとした時、ふと縁に何かが置いてあるのに気付いた。
……なんやこれ?
一度濡れて乾いた形跡のある不思議な絵の描かれた紙の上に何かが乗っている。
明かりに照らして紙を見れば、明らかに筆ではないこれまた不思議な何かで何やら文字が書いてあった。
ほお、これは楷書か。
俺も手習いで少しかじっただけやねんなぁ……んー?
……ちょ、こです……をやぶって……食べて、ね。お……れ様です……?
見慣れぬ書体で書かれたそれは綺麗なのか汚いのか、読み難いことこの上なく。所々がどうしても読めなかったが。
ちょこ? そーいや昼間なんか言うてたな。これがそーか。
紙の上にあったつるつるテカテカとした珍妙な小さな袋を手に取った。
あー破れって袋をか。
懐刀で僅かに切れ目を入れ中身を取り出せば、入っていたのは焦げ茶色の塊。
……ばばちい色やなぁ……。


