少々人とは違う好みをしているのかもしれないという小さな不安はさておいて。
火鉢に火を入れ沖田くんの側に置くと、薬箪笥から幾つかの薬種を取り出し、薬研(生薬を粉にする道具)などの道具を揃えて部屋の隅に腰を下ろす。
嫌々ながらも大人しく敷いた布団に横になった沖田くんの視線を感じつつ、俺は黙々と作業を始めた。
なんだかんだ言いつつも、長年の経験からすっかり身に染み付いたこの一連の流れが一番落ち着く。
すり潰され細かくなっていく生薬から薫る独特の香りはやはり心地良い。
こんな作業を見るのも初めてなのだろう、布団から顔を覗かせた沖田くんの表情も意外と楽しそうだった。
「けほっけほっ……そうそう山崎さん」
暫くそんな風に薬作りを見ていた沖田くんだが、はっと何かを思い出したように顔をあげた。
「はい?」
「安芸で女装してたって本当ですか?」
途端につい無駄な力が籠り、危うく薬研を倒しそうになる。
なっ……。
「どこからそれを?」
「吉村さんが綺麗だったって誉めてましたけど」
……おい、どこの阿呆がペラペラ触れ回っとんじゃい。
思いもよらぬところから漏れ伝わったそれに、ひくりと頬を引きつらせた俺を見た沖田くんは、肘をついたまま楽しげに頭を揺らした。
「今度また見せてくださいよ」
「嫌です」
自分にだけは絶対見せれん。
ここだけはときっぱりはっきり断って再び薬研を握る。
見せられるとしたらめっさ厚塗りした時だけやわ……。
「私が健やかならば、安芸についていったんですけどね」


