何も本当に俺の懐が甘かった訳ではない(と思う多分)。現に斎藤くんの攻撃は防いだ。
あえて打ち合いの中で言葉少なく会話したのは、これも仕事であるから。
あの二日に渡る激論以来、徐々に内部分裂を起こし始めている新選組において、向こう側に入り込むという任務。
それを任された斎藤くんから情報を取るのが俺の役目。
誰からの命であるのかは言わずもがな、だろう。
流石に俺やと立場上まるっぽ入り込むっちゅうんは無理やからな。
確かにこん人やったら何考えてるんかよぉわからん節があるさかい、皆も『あー伊東教に入信したんやー』くらいにしか思てへん。
副長の命やからか、ちょい下手っぴやけど笑顔の演技までしてくれはるしな……ぷぷ。
やっぱええ配役しはるわ。
「……何か?」
「いえ、何でも」
……加えて勘もええし。
じろりと睨むその人に肩を竦めて返すと、そっぽを向いたその頬が少しばかり紅い。
ほお、やっぱあれは自分でも必死なんや。
ふぅーん、なかなかかいらしとこもあるやん。言うても林五郎より歳下やもんなぁー。
そんな意外な反応に頬が緩みそうになった瞬間、
「隙だらけ、です」
「ひっ!?」
手加減なしで顔に木刀を振り回してこれるあたりは、なかなか本気で恐ろしい。


