「……只今戻りました」


藤堂くんの隣に下り立つと、にこりと微笑む。


「チッ、帰ってきたか」

「っ、戻りましたやあらへんっ! 早よ退けやぁっ!」


すると横と下からは其々予想通りの反応が帰ってきた。


体を二つ折りにし、ぺたりと上半身を土に付けている林五郎は、昔から俺が鍛えた甲斐あって流石の柔軟性だ。


ふむと関心しながら林五郎の背から降り、肩を竦めてみせる。


「無断外泊は隊規違反ですから」

「バレなきゃ大丈夫だって。つか近藤さんが率先してやってるんだし、もう隊規とか言えないでしょ」


しかし藤堂くんからの中々鋭い反論に言葉が詰まった。


確かに俺も最近の局長は少し変わられたように思っていたからだ。


いつのころからか彼方此方と芸妓を身請けして妾とし、家まで与えて通うようになった。


俺が安岐にいた間どうであったのかはわからないが、副長や藤堂くんの様子から、恐らくそれは続いているのだと察する。


上に立つ者として下に不満を抱かせる行動は如何なものかとも思うが……。


「まぁ、それでも我々が守らねば組織は瓦解してしまいますからね」


ある程度の決まりがなければこれだけの大所帯を纏めることは出来ない。


副長が鬼と呼ばれるのもまた、組織を縛る為の一つの縄であるように、寄せ集めの連中を纏めるには幾重ものそれが必要なのだ。



「……そんなの、勝手だよ」