【完】山崎さんちのすすむくん







「あー面白かったっ」


人通りの多い大きな通りを主に歩きながら、あっちの店にこっちの店。


女子の小間物好きはどうやら時が経っても変わらぬらしい。


同じような店を引きずり廻され、漸く長屋へ帰ってきたのはあれから二刻(4時間)は経とうかという頃だった。


若いって元気やな……。


普段とは違った疲れに溜め息を吐いて、俺は囲炉裏に火をつけようと薪を並べた。


「そーいえば、火って火打ち石同士を叩くんじゃないんですねー」


すると夕美は俺の背からひょっこりと顔を覗かせる。


そっから知らんのか。


……ふむ。


「ほな見とき、これはこーして火打金と合わせて使うんや」


夕美を振り返ることなく、俺は火の付け方を教示することにした。


「これが火口、種起こしみたいなもんやな。これを石と合わせて持って火打金で叩く」


刃を合わせたような甲高い音をたて散った火花がぽっと火口を燻らせる。


「んでこれが付け木。片っぽに硫黄が塗ってあるからこれをやな…」


火種のついた火口にそれを当て、ふうっと息を吹き掛けると一際大きく輝いた赤が付け木の先へとその光を移し、それは小さな火になった。


「おおー! 凄っ」

「感心しとる場合やあらへんで。次からはお前さんがやるんや」

「……へ?」

「へ? やあらへん。言うたやろ、一通り出来るようになってもらわな奉公には出せんからな。みっちり叩き込むで」


頬をひきつらせた夕美にニヤリと微笑む。


「なぁに、例え今何も出来んくてもかめへんわ、安心しぃ。これからこの俺が完っ璧に仕上げたるさかいな」


やるからにはとことんやる。


それが、俺の信条や。