見慣れた景色が並ぶ京の町。


すっかり自分の町として認識されたそこは、目にしただけで妙な感動を覚える。


最後に見た時はまだ桜の蕾も固く閉じていたのに、もう蝉が鳴く季節。蒸し暑くて堪らないのに、それすら不思議と懐かしい。


吉村と別れ、行きと同じく隠れ屋で着替えを済ませると漸く屯所へと向かう。


顔を合わせた人間に挨拶しながら向かった副長室で、その人から慰労の言葉を掛けられた時は、しみじみとした喜びすら感じた程だ。


そして、副長と諸々の話を終えた俺は部屋を出ると、とある場所へと足を向けた。






「沖田助勤、入りますよ」


中に気配があるのを確認して障子を開けると、その人は布団から僅かに身を起こして此方を見ていて。


それを目にした瞬間、ちくりと胸が痛んだ。


……やっぱちょい、痩せたな。


長く会っていないとよくわかる。


緩慢に、だが確実に体内を蝕む恐ろしい病の影を、その後ろに見た気がした。


けれど、


「山崎さんっ! いつ戻られたんですか?」


パッと明るく顔を綻ばせた沖田くんに、そんな思いは見せられない。


「半刻程前です。思ったより元気そうで安心しました」



そう微笑んで、俺はその布団の側に腰を下ろした。