それは、芽吹いた若葉もその色を濃くし、通りに吹く風が湿気を帯びて暫く経った頃だ。


とうとう幕府が第二次長州征討に乗り出した。


以前からずっと囁かれ続けていたそれは六月、ついに動いた。


圧倒的に多い兵力で戦いを仕掛けたのは、将軍家茂を総指揮官に擁し、いくつもの藩兵で構成された幕府軍。


対して迎え撃つ長州は支藩を抱えるものの、一大名に過ぎない。


一見、勝敗は既に決しているかに思えた。


だが届いてくる話は幕府側の敗退ばかり。


実際にこの目で見ることが出来た小瀬川での戦いでは、明らかに統制がとれ、身軽な軽装でミニエーと思われる飛距離の長い銃を手に戦う長州に対し、幕府側は重そうな甲冑を纏い、旧式の銃や刀槍などが主だった。


先の討伐で多少弱対したと思われていた長州だが、どこにそれだけの銃を手に入れる力があったのか。


これは間違いなくどこかの藩が手を貸している。


この辺りでは今回の討伐が始まるまでずっと、それに反対する意見ばかりが聞かれた。


実際、戦いが始まってからも早々に降伏し講和を求めた藩もあるという。


このままだと勝敗は意外な方へと転ぶのかもしれない。



一先ず飛脚を飛ばした俺達は、この戦乱にこれ以上巻き込まれぬうちに京へと戻ることを決めた。