ちょっと大坂まで、とは訳が違うその長さを伝えると、勢いよくその顔が上を向いた。


「え!? 二ヶ月もですかっ!?」

「こら声がでかい。……下手したらもっとかもしれん」


静かにの意を籠め、こつり額を合わせる。


今回、幕府の人間が長州の連中に話をしにいくのはその処遇を申し付ける為。然程時間はかからないだろう。


だが俺達は違う。


胡散臭い動きをみせる長州の懐近くに入り込んで、出来るだけ多くの内情を探らねばならない。


それにどれだけの時を要するのかは今の時点ではなんとも計れなかった。


ただ、夕美を残していくのは少々心配である。


夕美自身この町に馴染んできたとはいえ、これの危機感の薄さはやはり不安だ。


しかし隊務において、そんな私情は二の次でなければならない。



「そんなぁ……」


不安そうな声を聞くとつい心配が増してしまうが、こればかりはどうしてやることも出来ない。


「なんかあったら林五郎に頼り。まぁちと頼んないけど役には立つやろ」


それはそれでちと心配やけどな。


微妙に引っ掛かる思いは首を振って掻き消した。



「……なんか、あっさりしてますよね」


少しの間をおいて聞こえた不満げな声音に、顔を上げてその目を見る。


だが、


「烝さんは……寂しくないんですか?」


僅かに眉を寄せた夕美の尖った唇から小さく発せられた言葉に、不覚にも笑ってしまった。


その不安と不満がどこにあるのか、わかってしまったから。


もーまた自分はほんまに……。



「何で笑」

「すまん、可愛ええなぁ思て」