「……は?」
言葉の意図がわからず発したその言葉が、図らずも夕美の言う通りになっていたらしい。
うどんの一件で脱力していたということもあり。
またこいつ自身にも警戒心が薄らいでいたということもあり。
「お礼ですっ」
そう言って笑う夕美の指に不覚にも何かを口へ押し込まれた。
っ、な……!?
思わず身が強張った、が。
からん
口内を何やら固い物が転がる。
甘酸っぱいそれは初めて口にする味ではあったがこれは確かに……。
「飴……か?」
「どーですか?パイン味っ。袋のまま鞄に入ってたから少し持ってきたんですけど」
夕美がぺろりと舌を出すとそこには鮮やかな黄色をした輪っか型の飴らしきものが見える。
「ぱいん?」
「あー南の方の果物です」
ほー、薩摩辺りか?
しかし果物の味のする飴とはまた凄いな……形もなんやおもろいし。
舌で転がせば爽やかな酸味が口一杯に広がる。
ふむ、少しばかし違和はあるけどもこれはこれで。
「旨いな」
「へへ、そーでしょっ。持ってて良かったぁ!」
屈託のない笑みを見せたかと思えば、夕美は直ぐにしゅんと眉を下げた。
「……うーでもなんか大した物じゃなくてごめんなさい」
……あー……。
そうか、これはこいつなりの精一杯なんやな。
確かに何も持たぬとはいえ、それが飴玉と言うのがなんとも幼気(イタイケ)ではあるが。
……いじらしやんけ。
沸き上がる笑みを隠さずに、俺は夕美の前髪をくしゃりと梳いた。


