雲の欠片が落ちてくるように思える白く小さな雪。


音もなく縁側へと舞い降りたその冷たい粒に空を見上げれば、それは次から次へとやってくる。


屋根の向こうは分厚い雲が一面を覆っていた。


こら暫く止みそーにあらへんなぁ。


雪を見た条件反射なのか、ブルリと震える体に羽織の衿を正すと誰の物か分からぬ草履を引っ掛け、庭に揺れている派手な色彩の洗濯物へと向かう。


あの場所、この時間。


間違いなくあれば我が主の褌である。


今日も朝からバタバタしてやったもんな。そっからはお上ら相手の書簡やなんやらで部屋籠りっぱなしやし……ん? これまだ湿ってるやん、もー冬場はこれやから困るわー。


……て。俺は女子衆(オナゴシ)かっ!


触れた瞬間、つ、と眉を寄せてしまった己に突っ込み。


色とりどりの細長い洗濯物を取り込むと、部屋に干しておこうと俺は自分の部屋へ向かうことにした。


だがしかし、冷たい廊下を進み部屋の障子が見えてきた時、ふと感じた気配に全身の毛が逆立つ感覚に襲われる。


うーわ、


「おや、山崎殿」


見っかってもた……。


脱力感ののちに湧いた全速力で逃げ出したい気持ちを必死で抑え、横に伸びた廊下に立っていたその人物の方に顔を向ける。


「これは篠原さん、見廻りですか?」

「ああ。それよりそれはまたいやに派手だが……勝負褌か?」

「違います副長のですほら名前が書いてあるでしょう!?」


俺はこんな派手なん持ってへんっ!!