ずずっ ずるずるっ ずずずっ
時刻は丁度昼に差し掛かり、出汁の香りが思わず食欲を誘う賑わう店内。
……ほぇー……。
立ち上る白い湯気の向こうで次々と吸い込まれていくうどんについ魅いってしまう。
「……ええ食いっぷりやな……」
「ぶぁっふぇ」
「頼むからせめて噛み切ってくれ」
器用やなおい。
てか不細工過ぎるやろっ! 口からうどんが垂れ過ぎや。
「だって美味しいんだもんっ」
や、まぁ確かに此処は旨いで? 安くて旨い、俺もお気に入りや。
それにそんなけ幸せそうに食うてたら旨いなんて言葉はなくてもわかる。
問題はそこやなくてやな……。
目だけを動かして周りを窺えば、狭い店内の視線はもっぱら夕美に集中していて。
俺は思わず額を押さえ項垂れた。
「……仮にもうら若き女子やねんからも少し慎ましやかに食えや…」
豪快過ぎんねん。俺の方がよっぽど慎ましいがな。
「ふぇ?」
その妙な声に視線をあげれば今度は両頬がぷくぷくおかめ状態。
気が抜けるとはまさに今みたいなことを言うのだろう。
「……や、何かもうええわ……好きに食うてくれ……」
先の世とやらではこれが普通なんやろか……。
堪えきれない溜め息を吐き出して。俺はちゅるりとうどんを啜った。
「あー美味しかったー!! お腹一杯っ! ご馳走様です!」
店を出るや否や、これでもかと緩んだ顔で夕美はぽんぽんと腹を擦る。
その顔を見ていればいちいち気にするこっちがアホらしくなってくるから不思議だ。
「さよか、良かったな」
ぽんとその頭に手を乗せると俺は寒さに身を竦め、羽織の合わせを閉じ歩き出した。
「烝さんっ、口開けてこっち向いて下さい」


