日の下で見れば益々赤茶けて見えるその髪は相変わらず滑らかだ。


「何で結わへんの?」

「だって紐で結ぶの難しいんですもん」


せや、こいつはぶきっちょやった……。


「ほな簪の方が楽チンや。使い方わかる?」

「……あんまり」


その顔は全然知らんっちゅう顔やな。


気不味そうに笑うそいつに半笑いを返し、その髪から簪を抜き取る。


「しゃーないなぁ、よぉ見とき。こーしてこーして……こぉや」


己の後頭部は見れないからと、仕方なく俺の僅かに伸ばした後ろ髪で実演してやったと言うのに。


「ちょっ! 烝さん可愛いからっ!」


途端に吹き出す夕美。


……おいコラ。


「折角人が親切に教えたったっちゅうのにやなぁっ」


何笑てくれとんねんっ!


「わーんごめんなさいっ! 次はちゃんと見ときますからっ!」


……次?


振り向いた俺に待っていたのはそんな哀しい言葉だった。


流れた沈黙に吹いた一陣の風が、ひゅるりと間抜けな恰好の俺を打ち付ける。


……くすん。何でまた俺好いた女子の前で頭に簪差しとんねやろ。


こない中途半端な恰格やったらまだ女装姿見られた方がなんぼかマシやっちゅうねん。


なんて思いつつ、



「もぉせんからよぉ見ときやっ!?」


もう一度やってみせる俺は偉いと思う。






「出来た!」