改めて藤堂くんの欠けた部分を痛感していた俺の思考を遮ったのは、そんな夕美の声だった。
「そりゃ見た目はよく似てますけど中身も表情も違いますもん。りん……五郎さんは林五郎さんで、烝さんは烝さんです」
さっぱりとした様子ではっきりと言ってのけた夕美に顔を向ければ、それもまた此方を向く。
……っ。
瞬間、柔らかく咲いた笑みに年甲斐もなく顔に熱が上る。
『大丈夫』だと、その目が言っている気がしたから。
……ん、そやな。
どうやら過剰に反応しているのは俺だけらしい。
俺達の関係が変わってからも、何となく自身の諸々に負い目に似たものを感じていた。
だからどう、という訳ではないが、燻り続ける陰りはこういう時に表に顔を出す。
無意識にも、本当はその方が、なんていう身勝手な思いが頭の隅に過ってしまう。
けれど夕美の凛とした言葉一つで容易く心が凪いでしまうのだから不思議だ。
「……はいはいお二人さーん、世界に入らなーいっ」
胸に湧いた温かな思いに頬を緩めた俺の目の前に現れたのは、茶色く艶やかなみたらし串。
「折角同じ顔してるんだから三角関係とか横恋慕とかだったら面白いなーとか思ったけど何かもー良いです。山崎さんの意外な顔見れたからそれで良しとしときまーす」
ひらりと宙を舞うとそれは呆れた顔の藤堂くんの口へと吸い込まれていく。
それ、あながち間違(チゴ)うてへんのやけど……ちゅうかやっぱ自分根性ひん曲がっとるわ。
なんて思ったのは夕美も林五郎も同じだったのか。
「「「……はは」」」
俺達の乾いた笑いは息ぴったりだった。


