季節の歩みは牛歩のように緩やかだ。
それでもこの時期は朝晩の寒暖の差も大分激しくなり、雨が降る度に一歩、また一歩と秋が深まりつつある。
穏やかな日差しが降り注ぐ日中ですら吹き抜ける風は頬に冷たく、日陰へ入れば急激に気温が下がる。
確実に、四季は移ろいでいた。
「寒ない?」
甘い香りが漂う店内。八ツ刻近い今時分、唯一空いていた出入り口に近い床几に腰を下ろす。
隣に座るのは勿論、夕美だ。
「あ、はい、大丈夫ですよ」
「の割りに手ぇ冷たいやん。この時期からこないな手ぇしとったら冬どないすんねん」
ふと触れた指が恐ろしく冷たくて、そっと両の手でそれを包み込む。
掌にすっぽりと収まるその小さく柔らかな手をぎゅっと握った時である。
「ちょーお兄着いた側からいちゃつくなやっ」
「へぇー山崎さんって意外に優しいんだ」
「うんうん、やはり俺の目に狂いはなかったな!」
にょきにょきと俺の背から顔を覗かせた男達に夕美が縮こまった。
もぉなんやねん……。
最早持病のようになってきた溜め息を大きく吐き出し、俺は手近にあった義弟の額をぺちりと叩いて後ろを振り返った。
「別にいちゃついてなんていません、と言うか林五郎は兎も角どうして貴方達までついてくるんですか」


