「……ええ、まぁ」
何とかそう返事をすると、篠原はそのまま枕元にある本を見た。
「色々だな、滑稽本も読むし歴史書、兵法本。まぁ儒学に関するものが多いな……あぁ猥本も読む」
その申告はいらん。
妙なところで正直なそいつに内心頭を抱えながらも、どうにか表情を保つ。
「私も何でも読みます、また面白いのがあれば教えてください」
「む、ならこれはどうだ? 中々興味深い猥本だ」
て! 読んどったんそれかいっ!
ちゅーかんなもん読みながら俺待たんとってくれるかなっ! 今更ながら妙な悪寒が止まらんわっ!!
全身が激しく粟立つ俺に差し出された一冊の本。
……え、どうすんの? これ。
その腕を辿ってゆっくりと視線を上げれば、『早く受け取れ』と言わんばかりの眼で篠原はうんと頷く。
何でも読むと言ったさっきの自分を殴ってやりたい。
何が哀しゅうて俺こいつにこんなん借りなあかんねやろ……。
心で一つ涙を流し。
「有り、難うございます……」
どこか読み込まれた感のあるそれを受け取った。
古本であることを切に願う。
後日。
話の為に仕方なく、仕方なく! ひらりと頁をめくったそれに綴られていた男色のあれこれに、思わず部屋の端から端へと投げ捨てたのは致し方無いことであろう。


