「だから山崎さんを連れてきたんじゃないですか。主治医が一緒なら大丈夫ですよ」


それあれやろ、俺とゆー犠牲を増やしただけやろ。


だって俺無理矢理引っ張ってこられただけやん、何処行くかも教えてくれへんかったやん!


「どうしてもの用事がみたらしだとわかっていれば来ませんでしたよ……」

「あ、違いますよ、みたらしはついでで本命はあの人です」


あまりのあっけらかん振りに止まらない溜め息を再度吐き出せば、沖田くんはコソコソと耳に口を寄せてくる。


その視線の先にいたのは茶汲みとおぼしきはつらつとした一人の女子。


赤子でも孕んでいるのか、少しばかり目立つ腹を時折愛おしそうに擦っている。



「……、想い人ですか?」



今度は人妻か?



「ぶ、ごほっ! ち、違いますよっ! あの人は左之さんのお嫁さんですっ」

「へー……ぇえっ!?」


それは初耳やねんけどっ!


思わず大きくなってしまった声に慌てて口を塞ぐ。


そんな俺にふぅっと一息ついた沖田くんは、みたらしをかじると女子に目線を向けたまま小声で話を続けた。


「私も朝知ったばかりなんですけどね、突然『祝言あげるぞー』とか言うもんですから冗談かと思いましたよ。近藤さん達への報告も昨夜だったみたいです。多分今夜は宴会ですよ」


それで見に来たかったっちゅう訳かいな……そらいきなし祝言や言うてややまでこさえとったー言われたら確かにびっくりやけど。


沖田くんの意外な野次馬根性に呆れつつ、じっくり眺める俺もまた好奇心の塊だったりする。



「あ、山崎さんとこはお子さん大きくなりました?」

「……自分やっぱり実は性悪やろ?」