彼岸を過ぎれば幾分暑さも和らいで、時折頬に心地良い風が吹く。


幾つかの颶風(グフウ・台風)を耐え忍べば、空にはすっかり秋の雲。


干された褌達もどこか涼しげにたなびいていて。


暑さに眉を潜め歩いていた人々の顔にも爽やかな笑みが戻っていた。






「山崎さんって相変わらず少食ですよね」


口にみたらしを詰め込んだ沖田くんが、目をくりくりさせて俺を見る。


その顔は思わず指でつつきたくなる程の下膨れ感だ。


「貴方が食べ過ぎなだけです」


そら俺もよー食う方やないけどや、自分と島田は人並み外れ過ぎやと思う。


はぁ、と呆れた溜め息を吐き出せば、ぽん、と何かが頭に乗った。


「もっと食べなきゃ大きくなれませんよ?」

「余計なお世話やっちゅーねん」


背ぇ低いんはおかんの血ぃやっ。こちとらおとんすら越えられんかったん実はちょっぴし気にしとんねんからなっ。


ちゅーか今更背ぇとかもー伸びひんわっ!


ええねん、琴尾も夕美も俺よかちっこいし藤堂くんにも勝っとるもんっ。


明らかに楽しんでいるその顔をギロリと一瞥し、茶色いタレまみれの口に懐紙を貼り付けると俺は再び深く息を吐いた。



「非番の日は体を休ませろと副長から言われているでしょう、怒られても知りませんよ」