なんや……まだちゃんと仲良うやっとんねんな。アレ以来どーなっとるんか突っ込めへんかったさかい気にはなっとってんけど。


やっと聞けた二人の今にほっとする半面、何となくモヤッとした感情が胸に湧く。


この機嫌の良さはその所為……とか。


そんな思いが頭を過った。



「気になる?」


……なんやねん、その顔。


「別に」

「ふぅんー? ま、ほな行こや」


立ち止まった林五郎の口がにまっと憎たらしい弧を描いたのを一瞥し、俺は何でもないように前を向いた。


置いてきぼりになったそいつはやはりどこか癪に障る笑みを浮かべてトタトタと駆けてくる。



「ちゅか何処行くねん?」

「そら行ってからのお楽しみや」


なんや怪しいな……。



何故こいつが今日俺を誘ったのか。


その意味深長ないやらしい笑みの理由は、賑やかな大通りにある日に焼けた麻の暖簾を潜ってすぐ、理解することが出来た。










まだあまり人のいない店内に入ると、蒸した米の香りが鼻をつく。


加えて感じる甘ったるい匂いはあんこのものだろう。


まだ全然腹減ってへんねんけど。


なんて思いながら中に入った俺は、隅にポツンと腰掛ける人物に一瞬目を瞠った。




「……あれ? 烝さん?」