再び京の町を歩けば夕美はまたもきょろきょろと左右に首を降り、楽しげについてくる。
「あっ! あれ何ですか!?」
くんと袖や羽織の裾を引っ張られ振り向くこと数回。
「んー? ああ、金魚の棒手売(天秤棒の両端に商品を入れた桶などを下げた行商)やな。ここらは人通りも多いし色々あるでー。ほら、あっちにもおるわ」
「わー飴細工!! 風車も! へぇー」
こんなことの繰り返しだ。
「あ! あっちのは」
「待ち」
ふらりと横に足を踏み出した夕美の腕を引き寄せる。
直後、棒を担いだ健脚な男が脇をすり抜けていった。
「すまんなーにぃちゃん」
「や、連れが邪魔したな」
立ち止まることなく短い会話を交わすと飛脚の男はあっという間に人混みの向こうへ消えていく。
それを見送ることもなく、ついと視線を落とし、夕美の額を軽く小突いた。
「見たいんはわかるけどな、あんまふらふらせんよーに」
「ごめんなさい……」
しょんぼりと耳を垂らすこいつを見るとどうも子供を叱ってる気ぃになるわ……。
「……しゃーないな」
「え?」
よしよしと頭を撫でる代わりにその手を握る。
ま、周りからは奇異な目で見られるやろけども。
「一人で後ろ歩かして迷子なられても困るしな。ほらあれと一緒や」
と顎で指したのは近くにいた睦まじく手を繋ぐ母子で。
案の定夕美は頬を膨らます。
「また子供扱いっ!」
「俺より子供なんやろ? ほなええやん。ま、腕やら首根っこやら掴んどってもいいねんけど?」
「う、手でお願いします……」
「ほれみぃ、ほな行きまちゅよー」
「もー!!」
こーゆー反応は加虐心を擽るけどな。
その後もさっきと同じような問答を幾つか交わしていれば、二階の軒先に吊るされた藍地に白文字の布看板が見えてきた。
「あ! ゆって書いてある!」
「そ、あっこが風呂や」


