指を組みその肩に顎を乗せて前を見る。


変わらぬ町並み。


だが毎日どこかで人が死に、産まれている。


その悲しみも喜びも、こうして上から見下ろしてみればどこか他人事で、ちっぽけに思えた。


空にちりばめられた星々のように、もしかしたら俺達の想いなど本当はとても小さなものなのかもしれない。





「……難しいけど、だからこそ面白い、のかも」


ふと重ねられた手。


その小さな温もりに、吐き出しかけた溜め息を呑み込んだ。


「私だってなんかよくわかんないことになっちゃってますけど、でも何だかんだ言いつつその、結構楽しんじゃってるし」


キュッと力強く添えられた指、いつもより少し早口で紡がれる言葉に夕美の必死さが伝わってくる。


「色々あるからその、じんせーなのかなーって……ってうわ、何言っちゃってんだろ。その、兎に角! ずっとヘコ、落ち込んでても余計ヘコ、落ち込むだけ……ですよ?」


……なんや急にへこむの意味理解したわ。


なんて、つい突っ込んでしまう俺がいる一方で、腕の中の熱がじわりと拡がっていくように胸が温かくなる。


その通りだと納得してしまう。


変わらず前向きに物事を捉えるそいつに吸い寄せられてしまう。


俺を元気づけようと必死な様子がとても──








「おおきにな」