一先ず松本先生と別れ、約束通り沖田くんの部屋へと向かった。
朝、彼が妙な約束事を取り付けてきたのはこのことだったのかと、察してやれなかった自分に腹が立つ。
障子越しに西日の差し込む部屋。
鮮やかな橙に照らし出され闇を背負ったその姿は、そのまま黄泉へと吸い込まれてしまうのではないかというおかしな恐怖すら湧いた。
……阿呆、俺がそんなでどないすんねん。
そんな自分を叱咤して再び視線を上げるとそこにあったのは、悪戯が見つかった時の童のような笑顔だった。
「労咳、ですよね」
そんな気はしてたんです、と舌を出して頬を掻く彼は普段と変わらなく見えて。
それがまた、辛い。
そら此処におるっちゅうだけで俺らは死と隣り合わせや。けど、病はそれとはまた話がちゃうやん。
得体の知れんもんが己を蝕んでほぼ確実に死へと誘う。
言い知れん恐怖がそこにはある筈やのに──
「それでですね、ここは一つ土方さん達には内密にお願いしたいんですっ! ほら、あの人意外に心配性だし絶対止めるじゃないですか!」
なんで、こない明るぅおれるんや。
目の前で手を合わせ、反応を窺うように片目で俺を見る沖田くんに、腿の上に乗せた拳を握る。
言いたいことは山程ある。
だが先程の松本先生の言葉が脳裏を掠め、グッと奥歯を噛むと何とかそれを押し込めた。
「……貴方は」
震えそうになる喉を、軽く息を吸い込んで落ち着かせる。
「怖く、ないんですか」


