残る幹部らの診察も滞りなく終わり、先生が薬を調合する間、何を言って良いかわからない俺はただ黙々と進むその作業をじっと見ていた。
今此処で俺が聞いても良いのか、わからなかったから。
「お前さんは」
静かな部屋に、落ち着いた声音が響く。
「医師の仕事とは何だと思う?」
唐突で、謎かけのような問いに暫し固まる。
「怪我や病を治すこと、ですか?」
「それは何故だね?」
「……生かす為、でしょうか」
改めて聞かれるとよくわからなかったものの、詰まる所救いたいと思うのはそういうことだろう。
何とか導きだした答えに先生はにこりと微笑む。
「そうだね。でも儂は少し違う、生きる選択肢を与えることだと思ってるんだ」
「選択肢……」
「そう、生きる気力のない人間は病でも怪我でも、驚く程簡単に死んでしまう。儂らが与えられるのは選択肢だけ、選ぶのは本人だ。そして」
皺の刻まれた穏やかな表情のその顔が、ゆっくりと開け放たれたままの庭へと向く。
過去に診た誰かを思い出しているのか僅かに愁いた笑みを浮かべ、けれどはっきりと、先生は言った。
「己の刻をどう生きるか決めるのもまた、本人だけなんだよ」
それは、間違いなく沖田くんのことで。
彼に残された刻が限られたものであることを暗に示していた。
……やっぱり……やっぱり沖田くんは……。


