【完】山崎さんちのすすむくん



問診、視診、触診。


何も問題がなければ診察はあっという間に終わる。


だが、松本先生は道具の入った木箱から同じく木で出来た細長い棒のようなものを取り出し、沖田くんの胸に当てた。


先程も一度だけ見たそれは体内の音をより正確に聞くものらしい。


元医師であり、先生の診察を傍でずっと見ていた俺は、否が応にもその行動に不安が湧き上がってしまう。



さっきと場所がちゃう……あっこは……肺?


先程は心の臓の異音を聞き当てたそれは、明らかに違う動きで沖田くんの胸に押し当てられる。


その表情は真剣だ。



「お前さ」

「ね、先生、やはりただの風邪でしょう?」


ふと顔を上げた先生の言葉を、沖田くんが遮る。


正面側に座る先生と俺だけに見えるその笑みは、まるでそう言ってくれと懇願するように、頼りないものだった。


咳、肺。


流石に俺も一つの嫌な予想を浮かべてしまう。


まさか──



「……そうだね、咳止めを渡しておこうか。あとで調合して持っていくよ」


ぎゅっと掌を握る俺の隣で、先生が何事もなかったように微笑み返す。


その穏やかな目は、ちらりと俺にも向けられた。


それは患者と真っ直ぐに向き合う目。


確かな医師の眼だった。