ちりん
鈴の音と共に木から飛び降りた沖田くんがこっちに向かって走ってきた。
長い髪を靡かせ、それはもう風を切るように。
なんやろ。
初めはただ呑気にその姿を見つめていた俺も、瞬く間に近付くその姿に焦りを覚えた。
え、何、そろそろ足緩めなあかんのとちゃう? え、何これ。避けるべき? 避けるべきっ!?
ちりんちりんちりんちりん
同じく駆けてくるクロの首から鳴る鈴の音がもう何かの警鐘にしか聞こえない。
っ、えぇい、ままよっ!!
──ドンッ
「ーーっ、くぅー!」
ケツッ! ケツが割れたっ!
乾いた砂煙が微かに舞い上がるなか、結局共倒れする羽目になった俺の首には未だに沖田くんが絡み付いている。
こうなるとわかっていながらも避けられなかった俺は、やはり沖田くんに甘い。
いつもと様子の違うこの人を、避けることなど出来なかったのだ。
「中々熱烈な朝の挨拶ですね……。どうしたんです」
片手を後につき、脚の間に居座る沖田くんの背をぽんぽんと叩く。
この際、袴を履いていない俺の足回りが乱れまくっているのは一先ず置いておくことにする。
俺の言葉にピクリと体を跳ねさせたその人は、回した腕に少しだけ力を籠めた。
「山崎さん、一つ、お願いがあるんです」


