【完】山崎さんちのすすむくん




昨夜は早々に寝たお陰で今日は朝からすこぶる調子が良い。


朝の涼やかな空気の中、まだ誰もいない井戸で顔を洗うと、稽古前の慣らしと軽く境内を歩く。


足を動かせば体も頭も程よく目覚めるからだ。





ちりん



鳥のさえずりを聞きながら気の向くままに足を進めていると微かに聞こえた鈴の音。


それは最近よく耳にする音だった。


クロ?


音のした方へ顔を向ける。


すると少し離れた所にある大きな銀杏の木の上に、その姿はあった。


小さな黒猫を膝に乗せた沖田くんである。



……珍しい。朝は滅法弱ぁてよう永倉くんに叩き起こされとんのに。


流石に此処からでは距離と葉の具合でその表情までは窺い知ることは出来ないが、何となくいつもの彼とは違って見える気もする。


まだ、山南さんのことでモヤモヤしとったりするんやろか。


それともなんかまた別のことで悩んどったり?


……そっとしとくべきやろか……。


むくりと湧いたそんな思いについ口許に手をやる、が。


あかん、俺どうにも沖田くんに甘い気ぃするわ。


今のところ彼に関して特務を受けたことはないし、恐らくこれからもないとは思う。


しかしだからといって監察方として、一隊士に対し気を許し過ぎるのもどうなのか。


そらまぁ一応そこんとこは分けて考えとるつもりやけど……あ。