まもなく夏至という今時分、一年において最も一日が長い。
時刻はまだ八つ半(3時半頃)を過ぎたばかり。いつもならまだまだ明るい筈であるのに今日は既に薄暗い。
空は、いつの間にか静かに押し寄せてきた雲ですっぽりと覆われていた。
「あ、降ってきた」
雨粒が当たったのか、額を押さえた夕美が空を見上げる。
来てもうたかぁ。
少し前から風は湿り気を帯びた独特な香りを孕んでいた。
故に早々に戻ることにしたのだが、雨雲の方が一足早かったらしい。
次々と地面を濡らしていく雨に、ちらほらと通りを歩く人々も慌ただしく駆けて行く。
しかし生憎まだ一条すら越えておらず、走って帰るにはあまりに遠すぎる。
俺は兎も角こいつがな……ちと止むん待ってみるか。
きょろり、辺りを見渡せばすぐ側に程良さそうなものが目に入った。
「夕美、こっちや」
「結構降ってきましたねー」
白く町を覆う濃霧のような雨は然程大粒ではないものの、傘なしで歩くには少しきつい。
幸い近くの小さな寺にあった葉の生い茂る巨木のお陰で、俺達はなんとか無事雨を凌いでいた。
「拭いとき、冷えるわ」
懐から出した手拭いをパサリと広げる。
すると何故か夕美は目を見開いて俺を見て。
「烝さんんのそこって四次元ポケットみたいですよね」
次の瞬間小さくプッと吹き出した。
……よじげんぽけっと?


