爽やかな風が境内の木々を揺らし、美しい黄金色を映した水面に静かな波紋を広げる。
青く晴れ渡った空からは夏のような日差しが容赦なく照り付け、肌はじとりと汗ばんでいた。
「鹿苑寺って金閣寺のことだったんですねっ!」
飯を食い復活した夕美は、目の前の美しい光景にその顔を輝かせる。
大分前に約束した『また』をせがまれ俺たちは今、船岡山からほど近い鹿苑寺──金閣寺へとやって来ていた。
あの日の告白などなかったかのように普通に接してくる夕美に少しだけ安心する。
だが。
「ねぇ烝さん、もっと近く行ってみていいですか?」
「ん、ええよ」
「じゃー行きましょー!」
俺から手を伸ばすこともなく、するりと腕に絡み付いてきた手が強引に俺を引いて行く。
何となく以前より積極的になった気がするその行動には、まだ少し慣れなくて。
……緊張するわ。
手に汗かいてまうやんか。
前もよう似た感じで市中引き摺り回された気ぃすんのに、この様(ザマ)はなんやねん俺……。
「烝さん?」
「や、なんでもあらへん。行こ行こ」
さっきよりも熱くなった気がする体をパタパタと手で扇ぐと、すぐ側で俺を向く夕美から視線を逸らし、そそくさと足を進めた。
そうこうしながら暫く境内を散策したあと、近くの山にある大文字をちらと見、今宮神社の側にある茶屋であぶり餅を食べ。
「あー楽しかったー」
満足げに目を細めて笑う夕美に手を引かれ、俺達は少し早めの帰路につくことにした。


